宅建業許可取得のための要件_宅地建物取引士編
宅建業の許可・免許を取得するためには様々な要件を満たさなければなりません。そこで今回は、前回解説させていただいた事務所要件(レンタルオフィス編)と共に重要な、事務所に必ず常駐させなければならない資格者である宅地建物取引士の要件について解説させていただきます。
専任の宅地建物取引士の要件
宅建業法では、宅建業者に宅地建物の取引に関する専門家としての役割を十分に果たさせるため、その事務所等に一定数以上の成年者である専任の取引士を設置することを義務付けています。
この「一定数」は具体的に申し上げると、宅建業に従事する従業員5名に1名以上の専任の取引士の設置を意味します。宅建業に従事する従業員が6名~10名とすると2名以上の専任の取引士の設置が必要ということになります。
また、専任の取引士の数が不足した場合は、2週間以内に補充等必要な措置をとらなければなりません。
では、「専任の取引士」と「専任ではない取引士」の違いはなんでしょうか?正直、業務内容は全く変わりません。「専任の取引士」ではないとできない業務という制限はないのです。違うのは、①「常勤性」と②「専従性」という要件です。
《専任の取引士となるための要件》
①「常勤性」について・・・営業時間中常にその事務所のみに勤務できる状態かどうか。(雇用形態は原則問われませんが、営業時間中必ず出社して勤務している事が必要なため、フルタイム勤務でないと要件を満たせません)
②「専従性」について・・・専任となる法人のみで宅建業の業務に従事できる状態かどうか。(他の法人の代表取締役や常勤役員の兼任・会社員、公務員のように他の職業に従事している場合などは要件を満たせません)
この①、②両方を満たせないと専任の取引士となることはできず、「専任の取引士」を必要な人数設置できない場合は宅建業の免許を取得することができないということになってしまいます。また、「専任の取引士」となる大前提として宅地建物取引士の資格を取得していることが必要ですが、単に資格試験に合格して合格通知を受け取っただけでは「専任の取引士」どころか「専任ではない取引士」としても宅建業に従事することができません。
宅地建物取引士として宅建業に従事するための事前準備
では、宅地建物取引士試験に合格後、どうすれば宅建業に従事する取引士となることができるのでしょうか?この疑問について解説していきます。
宅地建物取引士として宅建業に従事するためには、合格後に合格した試験地の都道府県知事に対し宅建士の資格登録申請を行い、宅建士証の交付を受ける必要がございます。(登録しただけでは宅建士証は交付されず、別途交付手続きが必要なので注意!)
それだけでいいの?と思われた方もいらっしゃるかとは存じますが、実はこれがちょっと厄介で、合格した時のそれぞれの状況により手続きの仕方が異なってくるのです。以下4パターンに分けて表にしてみました。
①合格後1年以内かつ、 実務経験2年以上 | 合格後、すぐに資格登録手続き可能。登録完了後すぐに交付手続きもできる。 |
②合格後1年超で、実務 経験2年以上 | 合格後、すぐに資格登録手続き可能だが「法定講習」の受講が必要。 法定講習受講後、講習会場にて宅建士証の交付が受けられる。 |
③合格後1年以内かつ、 実務経験2年未満 | まず「宅建士登録実務講習」を受講し、修了証明書を受領後に資格登録手続き可能。 その後、交付手続きをして宅建士証の交付となる。 |
④合格後1年超で、実務 経験2年未満 | まず「宅建士登録実務講習」を受講し、修了証明書を受領後に資格登録手続き可能。 登録完了後に「法定講習」を受講し、講習会場にて宅建士証の交付が受けられる。 |
表を見ていただくとお気付きの方もいらっしゃるかと存じますが、①➡④に向かうにつれ手続きにかかる手間が増えていきます。また、宅建士証交付までの期間と費用も増えていきます。
ご開業される方ご自身が専任になる、もしくは専任になってもらえる取引士の方が見つかっても上記手続きが完了しておりませんと宅建業の免許許可申請を出すことができません。上記手続きに数ヶ月かかってしまう場合もございますので、特にご開業を予定されている方は注意が必要です。
※「法定講習」は1日、「宅建士登録実務講習」は数日プラス修了試験がございます。
※「宅建士登録実務講習」については実施する機関により修了日に即日修了証明書を交付してもらえる場合と郵送の場合とがございます。
※各講習とも日程や申込み方法がまちまちですので、詳しくは各機関にお問い合わせ下さい。(弊所では各講習に関するお手続き、お問い合わせには対応いたしかねますのでご了承下さい)
専任の要件を満たさない事例
最後に、弊所にもお問い合わせが多い「専任として問題ない?」という疑問に対して、要件を満たさない事例を列記させていただきます。
・専任になる予定の法人以外の法人で代表取締役、代表者に就任している場合(都道府県により「非常勤証明書」を提出すればOKな地域もあります)
・個人事業主になっている場合
・他の法人に常勤している場合(他の法人に籍のある従業員も不可)
・他の法人の常勤の役員に就任している場合(他の法人から「非常勤証明書」を発行してもらえればOKの可能性あり)
・専任になる予定の法人で監査役に就任している場合
・専任になる会社への通勤が不可能な場所に在住している場合
・従前の勤務先の削除をしていない場合(過去に宅建士として宅建業に従事していた事のある方は、宅建士登録簿の「勤務先」欄の確認が必要)
・宅建士証の有効期限が切れている場合(宅建業免許許可申請時に切れていなくても申請中に切れる可能性がある場合は要注意)
・外国人の方で、在留資格の滞在期限が切れている場合(宅建業免許許可申請時に切れていなくても申請中に切れる可能性がある場合は要注意)
上記太字箇所が弊所でも一番多い事例となります。従前の法人を退職しても辞めた法人側では個人の勤務先の削除手続きはしてくれませんので、いざ新しい法人で専任として申請しようとした段で要件を満たさなく削除手続きで時間を取られてしまい、開業が遅れてしまうケースがございますのでご注意下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、宅建業の免許取得のための2大要件の一つである「専任の宅地建物取引士」につて解説させていただきました。専任としての宅地建物取引士の需要は高く、開業したくても専任の取引士がみつからなくて・・・という声もよく聞くようになりました。ご開業される方ご自身が専任の取引士としてやっていこうという場合でも、数社の代表者になっていらっしゃいますと要件を満たしませんので、専任の取引士を新たに見つけてこなければなりません。
せっかく専任の取引士になってくれる方が見つかっても、今まで見てきたような手続きを経てない場合には、ご開業まで随分時間がかかってしまう可能性がございます。また、その間に専任の取引士予定の方と揉めたりするケースもございますので、宅建業をご開業される方は事前に免許取得の要件やスケジュールをしっかり練ってから開業の準備を進められる方がよろしいかと存じます。
弊所では、専任の要件確認(勤務先削除も可能)やアドバイス、スケジューリングのご相談も含めて対応可能ですのでお気軽にご相談下さい。
(これから新規で宅建業を始めたいお客様はこちら➡宅建業許可申請)
(既に宅建業を営んでいて変更や更新のお客様はこちら➡宅建業免許の更新手続きと有効期限について!!)