「特定」行政書士を取得しました
令和2年度の特定行政書士法定研修全18時間を受講し、考査試験も無事通過。
晴れて「特定」行政書士となりました。
でも特定行政書士って何?普通の行政書士の資格と違うの?という声が聞こえてきます(幻聴かな?笑)。
そこで、今回は特定行政書士と行政書士の違いについて解説していきます。
特定行政書士とは?行政書士との違いは?
日本行政書士会連合会から言葉を借りますと、平成26年6月に公布された「行政書士法の一部を改正する法律」により、日本行政書士会連合会(以下「日行連」といいます。)が実施する特定の研修を修了した行政書士は、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することを業とすることができることとされました。とあります。これが「特定」が付いた行政書士しかできない業務となり、普通の行政書士との違いになります。この改正法が平成26年12月27日に施行され、第1回目の法定研修及び考査試験が平成27年から開始されました。まだ、比較的新しい制度なんですね。そのためか、資格取得のハードルが高いのか、行政書士登録者数が約5万人で、そのうち特定行政書士は約4,400人と約12人に1人しかいません。
元々は弁護士しかできなかった業務でしたが、特定行政書士になればできるようになった。ということだけでもすごいことだと思いますので、今後特定行政書士を目指す方が増えて行くかもしれませんね。
特定行政書士になるには?
では、特定行政書士になるための要件を見ていきましょう。
特定行政書士になるためには、大前提として行政書士として各都道府県にある行政書士会を通して日本行政書士会連合会に登録を完了していなければなりません。単に行政書士の資格を持っているだけではなることはできません。
登録後、年1回行われる全18時間ある法定研修をすべて受講し、10月に行われる考査試験に合格しなければなりません。この法定研修は通常4日間に渡り行われ、遅刻にも厳しく結構ハードです(今年度は新型コロナの影響で最初の1コマだけ出席で残りはネット受講でした)。考査試験は例年30問出題され、合格ラインは約7割と言われています。ただ実際に自分が何点とれて合格したのかは通知されませんでしたので確かではありません。また、法定研修を全て受講しないと考査試験の受験資格すら与えられないので要注意です。
私は昨年行政書士試験に合格し、あまり間隔を空けて受けると知識が抜け落ちてしまうのが怖かったので間髪入れず今年受けました。それでも法定研修から試験までの約50日間、毎日2時間は勉強しましたが試験は難しく感じました。行政書士試験から間隔が空いてしまっている方は結構苦労するかもしれません。
まぁ、本来弁護士しかできない業務を行政書士が行えるようになる訳ですから当たり前といえばそれまでですが。
特定行政書士は実際に何ができるの?具体例を挙げてみる!
特定行政書士という資格があるのはわかったけど、じゃあ結局何ができるの?の疑問にお答えいたします。
まず、普通の行政書士ができる業務は全て行うことができます。そこにプラスして以下の業務が行えるのです。
・審査請求…行政庁の処分に不服がある者、あるいは処分の申請をしたにもかかわらず行政庁が何らの処分もしないこと(不作為)について不服がある者は、当該処分を見直すように最上級行政庁(上級行政庁がない場合には処分庁、すなわち当該処分を行った行政庁)に求めることができる手続き。
・再調査の請求…審査請求とは別に、特に法律で定められた場合に限り、上級行政庁ではなく処分庁に対して直接、処分の見直しをすることができる手続き。審査請求より簡便で結果が出るのが早いのがメリットですが、その分より深い審理はしてもらえない、第三者機関が介入しないので透明性的にどうなのかというデメリットもあります。
・再審査請求…審査請求をしたけど認められなかった場合に法に特別の定めがある場合に限り、再度審査請求をすることができる手続き。
これら3種についての行政庁(行政機関)に対する不服申し立てについて、書類の作成及び代理人としてお客様と行政庁の間に入ることができるのです。但し、申請書や添付書類等を行政書士(代理人となる行政書士が作成していなくても可能)が作成しているものについてしか行うことができないという制限がついています。
具体例
ケース1…行政書士に宅建業許可申請手続きを依頼。行政書士が代理して書類作成及び都庁(県庁)に許可申請➡要件を満たしているのに却下又は手続きを進めてくれない➡当行政書士に審査請求を依頼➡当行政書士が審査請求書及び添付書類を作成し代理人として行政庁(行政機関)に審査請求
ケース2…行政書士が風俗営業法に基づくパチンコ店の営業許可申請をし許可が下りた。近隣の住民から騒音や住環境等の問題に悩まされる➡許可申請をした行政書士とは別の行政書士に当該許可申請を取消すよう審査請求を依頼➡別の行政書士が審査請求書及び添付書類を作成し代理人として行政庁(行政機関)に審査請求
ケース1の場合は各種営業許可申請を依頼した行政書士にそのまま不服申立てを一貫して依頼しているケースです。以前は許可申請は行政書士、不服申立て以降は弁護士となっておりましたが、許可申請から携わっている行政書士の方が事情をよく分かっているので手続き的にはスムーズにできるようになりました。ただし、通常は営業許可申請を受けた行政書士が事前に要件を確認し、整った状態で許可申請を行いますし、行政庁(行政機関)も要件に沿ってきちんと審査をしてくれるので、こちらのケースは少ないかなと考えます。どちらかというとケース2のような案件が多いかと。
ケース1と2の大きな違いは書類作成や手続きを代理した行政書士以外の行政書士に不服申立ての手続きを依頼していることです。これも可能であるということです。そのためケース1の場合でも他の行政書士に不服申立ての依頼を行うことが可能ですが、通常は当初から依頼している行政書士に依頼するのが一般的なのでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?特定行政書士について見てきましたが、まだまだ世間一般的に知られている制度ではないかと思います。私自身、今回特定行政書士となりましたがお客様の利便性に資することができるよう、より一層の研鑽及び特定行政書士制度を広める努力が必要であると感じました。
最後に、不服申立てをしてみたけど納得する結果が得られない場合や最初から行政事件訴訟を提起した方がよいケースなどは、特定行政書士ではなく弁護士にバトンタッチとなります。まずは不服申立てを行うのか、いきなり訴訟を提起してしまった方がよいのかはそれぞれの救済手続きにメリット、デメリットがございますので弊所にお気軽にご相談下さい。
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※弊所はワンストップサービスを展開するジェネシスグループに属しておりますので、弁護士へのバトンタッチもスムーズに行うことが可能です。